2次方程式の解を目で見る

  z^2の「グラフ」 発表風景

 1年生は総合的学習の時間の成果の発表。その中の一人は、授業で2次方程式の解とグラフの関係を学習したとき、複素数解についてはどうなるのかを疑問に持ち、複素変数の2次関数のグラフを作ることができないかと考えた。そして、出来上がったグラフを見て、複素数解との関係を調べた。その結果実数解の場合を包括する理解ができることがわかった。

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1. 2次方程式の実数解とグラフの関係

 「方程式f(x)=0の実数解」  は、  「関数y=f(x)とx軸の交点のx座標」  である。
 例として、次の方程式とグラフを見てみよう。
   式1
式2 グラフ1

 ところが、次の方程式は実数解を持たない。複素数の解を持つ。
   式2
この方程式の左辺の関数のグラフは次のようになりx軸との交点を持たない。
   式2 グラフ2

2. 実数と数直線 vs 複素数と??

    グラフ3
実数は直線上に一列に並んでいるのだから、虚数単位iは数直線上にはない。
    グラフ4
このように考えて、例えば複素数2+3iは上のように平面上の1点と考えることにしよう。

 関数の変数xを複素数zまで拡張すると、そのグラフを考えるときには、zは平面上を動くと考えることとなる。 
    式3
このときの値も複素数となるから、独立変数に平面、従属変数にも平面をとって、関数のグラフは4次元の世界で実現されることになる。 われわれ3次元の住人には見ることが出来ないものなのであろうか?

 そこで、「実部だけ」、「虚部だけ」を考えることにした。こうすると、3次元の世界で実現可能となる。
    グラフ5

3.w=z^2のグラフをつくるには?

 もっとも簡単な2次関数を、複素数変数で考えた場合のグラフを作ろう。z=a+biに対して、w=z^2を計算すると、上のようになる。
 w=c+diとすれば、
    式4
これらが、それぞれ、どのようなグラフになるかを考えよう。

 c=a^2-b^2 を考えよう。2変数なので、一つの変数を固定して、もう一つの関数と考えてグラフを考えていこう。
実部0  実部1  実部2  実部3  実部4
c=a^2-(-2.5)^2  c=a^2-(-2.0)^2  c=a^2-(-1.5)^2  c=a^2-(-1.0)^2  c=a^2-(-0.5)^2
実部5  実部6  実部7  実部8  実部9
c=a^2-0^2   c=a^2-(0.5)^2  c=a^2-(1.0)^2  c=a^2-(1.5)^2  c=a^2-(2.0)^2
 
別の変数を固定すると、異なる切り口でのグラフが並ぶ。
実部10  実部11  実部12  実部13  実部14
c=(2.5)^2-b^2  c=(2.0)^2-b^2  c=(1.5)^2-b^2  c=(1.0)^2-b^2  c=(0.5)^2-b^2
実部15  実部16  実部17  実部18  実部19
c=0^2-b^2   c=(-0.5)^2-b^2  c=(-1.0)^2-b^2  c=(-1.5)^2-b^2  c=(-2.0)^2-b^2
これらをずらりと並べると、3次元のグラフとなる。
実部21 実部22 実部23 実部24

 d=2ab を考えよう。d座標の目盛りの取り方を縮めて、d=ab を考えればよいので、そうする。
虚部0  虚部1  虚部2  虚部3  虚部4
d=a×(-2.0)     d=a×(-1.5)    d=a×(-1.0)    d=a×(-0.5)    d=a×0
虚部5  虚部6  虚部7  虚部8  虚部9
d=a×(0.5)     d=a×(1.0)    d=a×(1.5)    d=a×(2.0)    d=a×(2.5)
 
別の変数を固定すると、異なる切り口でのグラフが並ぶ。
虚部10  虚部11  虚部12  虚部13  虚部14
d=(-2.0)×b     d=(-1.5)×b    d=(-1.0)×b    d=(-0.5)×b    d=0×b
虚部15  虚部16  虚部17  虚部18  虚部19
d=(0.5)×b     d=(1.0)×b    d=(1.5)×b    d=(2.0)×b    d=(2.5)×b
これらをずらりと並べると、3次元のグラフとなる。
虚部21 虚部22 虚部23 虚部24

4.w=z^2のグラフを作ろう!

上に述べたように考えて、w=z^2のグラフを実際に作ってみたのがこれである。
模型2 模型3
 
模型4 模型5
 
模型6 模型7
 

5.2次方程式の解を見てみよう。
実数変数の場合、どんな2次関数のグラフも、y=ax^2のグラフを平行移動して得られた。複素数変数の場合はどうなるのか考えてみた。
式4
このことから、複素数変数の2次関数のグラフも、
模型3
となっていることがわかる。

実数係数の2次方程式の複素数解は、グラフ上ではw=c+di=0となる平面上のzである。したがって、実部のグラフと虚部のグラフがともに「 c=0 かつ d=0 」を満たすzを探すこととなる。

 上記の平行移動のことを考慮してみると、方程式
   z^2-D=0
を考えればよいことがわかる。
 われわれが作ったw=z^2のグラフにおいて、まず、虚部のグラフを見てみよう。虚部のグラフで d=0 となるのは
グラフ5 模型8
 
すなわち、「 ab=0 」を満たす複素数z=a+bi が虚部dを0とする。このような点は、
   実軸上の点  あるいは  虚軸上の点
ということとなる。
 したがって、実軸上と虚軸上で、実部のグラフでc=0となるzを探すこととなる。
     グラフ6
このw=z^2のグラフが「-D」だけ、c軸方向に平行移動したグラフをみることになる。

(1) D>0 のとき
     グラフ7 グラフ8
       実部のグラフの実軸上の部分     実部のグラフの虚軸上の部分
この場合、実軸上に2つの解があり、虚軸上には解がない。

(2) D=0 のとき
     グラフ9 グラフ10
       実部のグラフの実軸上の部分     実部のグラフの虚軸上の部分
この場合、実軸上に1つ、虚軸上に1つの解があり、これらは同じもの・・・o+oi=0 であるから、唯一つの複素数解がある。

(3) D<0 のとき
     グラフ11 グラフ12
       実部のグラフの実軸上の部分     実部のグラフの虚軸上の部分
この場合、実軸上には解がなく、虚軸上に2つの解がある。

 一般の場合には、このグラフを実軸方向に平行移動するだけである。

6.おわりに

 複素数のことは知っていたが、複素数を変数とする関数のグラフがどうなるかは、初めて考えてみた。これまで実数解がでるときと、複素数解がでるときと、ばらばらなものと考えていたことが、このグラフを作ったことによって、一つのことだったということがわかった。
発表風景2

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