’04杜陵サークル8月例会の案内

 暑中お見舞い申し上げます。サークル会員の皆様夏休みをいかがお過ごしでしょうか。サークル会員の皆様のことですから部活・課外・研究会ときっと忙しくかつ充実した毎日を過ごしていることでしょう。さて、杜陵サークルの8月例会を次の日程でもちます。今回のサークルは何とあの群馬大の瀬山士郎先生が参加することになっています。岩手大学での集中講義注1の最終日注2と日程を合わせてサークルを行うことにしたからです。忙しい中でしょうが、なにとぞ都合をつけて参加くださるようお願いいたします。なお、例会終了後にいつもの月見亭で“いく夏を惜しむ会”をもつ予定ですので、こちらの参加もよろしくお願いします。

 注1 「大学の数学から見た小学校算数教材」

 注2 当日403号教室で4:00から談話会があります。都合のつく人はこちらも参加してください。

 

1 日      時 8月20日(金)pm5:30から8:30まで

2 場      所 岩手大学教育学部小宮山研究室(407号)

           tel 019-621-6539  fax 019-621-6543

3 サークル例会  実践レポート発表・検討、教具作り& 数学雑談

インフォメーション

 

7月28日(水)高教研の数学部会の盛岡地区研究大会がこずかた会館でもたれ、金濱先生が「射影の数学」の発表で、みごと9月の釜石の県大会の「出場権」を得ました。サークルでの検討がうまく生かされたよい発表でした。

8月2日(月)〜5日(木)飛騨高山でAMIの全国大会がもたれました。記念講演は名古屋大の池内了先生。終焉を迎えつているかも知れない科学・技術とこれからの我々が力を合わせて作っていくべき「等身大の科学」という壮大な話。また今回の新企画「数学散歩道」「数学の広場」もとても好評でした。さて、サークルからは小宮山・伊藤・宮本・下河原・川村先生の5人が参加。宮本先生は「私立文系コースの数学」、伊藤先生は「三角関数表を作ろう」のレポート発表を下河原先生は「無理数の小数表示の色塗り」のポスター発表をしました。また、この大会に合わせて作った杜陵サークル通信、レポート集、宮本次郎レポート集などの書籍販売を行いました。これらの様子は、宮本先生のホームページに掲載されています。

8月7日(土)〜9日(月)秋田市さとみ温泉で東北民教研がもたれました。サークルからは小宮山・伊藤・宮本・大内先生が参加しました。第1の夜は「算数・数学おもしろ教具まつり」。宮本先生の「2乗和のキューブ」「2次関数のスダレ」などの披露。2日目の中・高分科会は、昔のAMIの分科会のようなとてもリラックスした雰囲気(横になって聞いてもOK)で進行。残念だったのは都合で、大内先生「習熟について」のレポートが聞けなかったことです。サークルで発表してくれませんか?

9月11日(土)〜12日(日)仙台市で宮城県AMIの研究会がもたれます。北海道大学の須田先生の講演をメインに小・中・高の授業講座が予定されています。サークルから、下町先生が高校の講師として参加します。だれかいってみませんか?

2006年のAMI全国大会実行委員会の通信「ネコ仙人のつぶやき」が創刊されました。皆さんご協力で是非この通信を育てようではありませんか。

絶好調の宮本先生と下町先生のホームページ。宮本先生のホームページの中に杜陵サークルのコーナーがあります。皆さんのぞいてみよう。

   下町先生のHP  http://www5b.biglobe.ne.jp/~simomac/

    宮本先生のHP  http://homepage1.nifty.com./toretate/

7月例会の様子

 7月24日(土)の杜陵サークル7月例会の様子をお知らせします。

●なぜ数学をまなぶのか                  井上 具規(花巻北高校)

 『なぜ数学を学ぶのかという問に、私はこう答えている「楽しいから」。私にとって、これがすべての解答であった。難しそうな問題を考えていますね。という問いは、従って、楽しそうな問題を考えていますね。とするのが正しい。喫茶店に入って、のんびりとコーヒーを飲んでいると、ハリネズミの形をした照明器具を見つけた。普通ならそれでおしまい。しかし、その外側は、ペーパークラフトになっており、一枚の紙上に展開図を描き、曲げてつないだだけというシンプルなものであった。こうなってくると、どんな展開図になるかに興味が移ってくる。慌ててそばにあった紙に書き始めた。…(中略)…「世の中は、なんと楽しみに満ちていることか」といつも思ってしまう。』

 『数学はなんの役に立つのですか?この質問にきちんと答える前にちょっと考えて見たい。「○○はなんの役に立つか」は「○○はやりたくないです」といのは同義語であるという論理は間違っている。後者は完全否定であって、もう数学は受け付けないという意味。それに対して前者の嫌いなんだけど、なんとか勉強したいので助けてくださいという意味で、明らかに違う。皆さんの苦悩に少しでも近づき、より興味を持ってもらえるようにするのが私の役目だと考えている。』

 時折生徒に聞かれる「なぜ数学を学ぶのか?」という質問に、比較的真面目に答えたプリントの紹介でした。生徒の本質的な疑問に、このように「直球」で答える先生は最近少なくなっているような気がします。

 

●飽和鎖式炭化水素の構造異性体を数える          井上 具規(花巻北高校)

 飽和鎖式炭化水素の構造異性体の数を数えるソフトのプログラムを解析した。リカージョン(再帰)の構造をうまく利用して分類しているのがおもしろい。

@ まず、次の図1のような結合の手が1本余った“基”を考える。ただし、ただしを意味している。Sizeは、Cの数。Lengthは基の最も長い鎖のCの数である。

A こうしてできた基をLengthを基準にしながら生成していく。(図2)Cの横に同じLengthの基を対にして配置して生成する。配置した基のNoの小さい方をNとするとき上下にはNo.N以下の基をつける。こうして生成されるが飽和鎖式炭化水素である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

付録:平行六面体の謎

 井上先生が授業で、図3のような平行六面体の展開図でペーパークラフトをさせたら、ある生徒が全て反対に折って裏返したものを作った。ところが、裏返したものと表で作ったものが合同であることに気がついた。ホントかしら?

 サークルでは、はじめは“そんなことが起こるはずがない”という感じだったが、実際に作ってみると確かに合同である。ウーム!そのうち、その場に同席していた院生の小屋地さんが証明のアイデアを見つけた。たしかに、平行六面体は、裏返しても合同になるのである。でも、まだ信じられない…。

 

●ヘロンの公式・オイラーの証明               宮本次郎(釜石南高校)

 宮本先生はかねてからヘロンの公式の証明法のコレクションをしているが、「オイラー入門」という本で新たな「オイラーによる証明」を見つけたという。

ABCの3辺の長さをa=BC, b=CA, c=ABとし、3つの角をα=A, β=B, γ=Cとする。また、内接円の中心をO,半径をr=OP=OUとする。線分OCを延長し、その延長線上にBVCVが垂直になるような点Vをとり、線分OPを延長しBVと交わる点をQとする。また、三角形の頂点から内接円と各辺の接点までの距離を図のように、x,y,zとする。 こうすると容易に

OBVOAU

がわかり、これより

BV:OV=AU:OU……@

さらに、

VBCVOQ

がわかり、これより

BC:OQ=BV:OV……A

である。@、Aより

BC:OQ=AU:OU

これから、

……B

が成り立つ。さらに、

BPQOPC

より、

PQ:PC=BP:OP

これから

……C

である。B、Cより

……D

ABCの面積Sは、s=x+y+zとすると

一方、x=s-a,y=s-b,z=s-cであるから

を得る。

確率の授業                        宮本次郎(釜石南高校)

 確率の授業の導入の様子を紹介します。

みやじ「今日から確率を勉強します。中学校のときにも確率の勉強はしましたね。中学校のときに、さいころを投げたり、コインを投げて実験をやったことがある人はどのくらいいますか?」

(数人の生徒しか手を上げない)

みやじ「ふ〜ん・・・。じゃあ、質問しますが、「確率」って何?」

生徒B「さいころをふって、1の目がでる確率が

みやじ「さいころをなげたとき。1の目が出る確率・・・の「確率」って何?」

生徒B「・・・」

みやじ「それは、回数かい?」

生徒B「回数じゃない・・・」

みやじ「中学校でさいころを投げる実験をした人に聞きましょうか・・・。実験って何をした?」

生徒C「さいころを投げた」

みやじ「さいころを投げてなにをした?」

生徒C「何の目が何回でたか表をつくった。」

みやじ「ふ〜ん・・・んで、何がわかった?」

生徒C「

みやじ「何が?」

生徒C「・・・」

生徒D「比率だ・・・」

みやじ「うん・・・そうだろうね・・・」

(さいころを6回投げて、何の目が何回でたか調べてみると、1が3回もでたり、全然でなかったりするようなことが起きる。けれども回数が多くなってくると、さすがに1の目が全然でないなんてことはなくなってきた。いくつかの班に分かれて実験しおなじ目が出る比率を比べていくと、回数が多くなってくると、班により多少のでこぼこはあるけれども、だんだん同じような値に近づいて行く。近づいて行くある一定の比率を、1の目が出る確率というのであった・・・)

みやじ「ところで、さいころを投げたときに、1の目の出る確率はいくつ?」

生徒E「

みやじ「どうして?」

生徒E「さいころは1から6の目があるから

みやじ「いま、確率とは、さいころをたくさん投げていくとき、1の目の出る比率がだんだんある一定の値に近づいていく、その一定の値のことだと説明したけど、そういう「確率」と、君が言っているという確率と、同じものかい?」

生徒E「・・・」

みやじ「じゃあ、みんなに聞くけど・・・「近づいて行く一定の値」と「6つあるから」という確率・・・ふたつのことは、同じものですか?三択で手を上げてもらおう。

1 同じもの   2 違うもの   3 興味ない

さあどうだ」

(1の同じと答えた生徒は3人、2の違うものと答えた生徒は37人、3の興味がないと答えた生徒はいなかった)

みやじ「そうですか。いやあ・・・3の興味ないという人がいたらどうしようか心配でしたが、みんなまじめに考えてくれたうれしいです。ところで、「近づいて行く一定の値」と「6つあるから」という二つの「確率」は違うものじゃないかと感じている人は多いようですね。さいころを投げたとき、1の目がでる確率はということについて、これはひょっとして間違っているんじゃないかという人はいますか?」

生徒(・・・)

みやじ「みんなには自信があるのですね。これは正しいと・・・」

生徒(うなずく)

みやじ「じゃあ、違うという二つが実は同じだということを説明しないとだめだね・・・。できる人いる?」

生徒(・・・)

 このあと授業はどのように進んだか興味が湧きますね。続きが読みたい人は、宮本さんと直接連絡をとってください。

 

 

●三角比の定義をめぐって                  伊藤潤一(盛岡北高校)

 本校で使っている教科書の三角比の定義があまりにひどい。

それは…

@「直角三角形の2辺の比の値」という一種の「不変量」自体が生徒にとってわかりにくい。

A「直角三角形の2辺の比の値」が角θだけで決まるという一種の「暗喩」だけでは、角θと辺の関係がイメージしにくい。

 このように実にわかりにくい定義にもかかわらず。実際の授業では、例えば3,4,5の直角三角形を見ながら「」のような練習をたくさんやる。やっているうちに何となくわかったような気にさせてしまうというのである。つまり

「難しいものは鵜呑みにさせて、あとは演習で馴れさせる」

という常套手段を使って「ひどい定義」を補っているわけ。

 また、鈍角の三角比の定義もひどい。

それは…

「鋭角での2辺の比」⇒「鋭角での座標の比」⇒「鈍角での座標の比」

 これは「約束事の押しつけ」である。つまり余計なことを考えず、あとは

「この約束をひたすら守りなさい!」

というわけである。どうして「2辺の比を座標の比に変える必要があるのか」がなにも語られていない。形式不易の原理を使って、定義の拡張をする場合は、その定義がwell-definedであることを十分に納得させなければならない。

 では、三角比の定義はどうするか?

@ 図のようにサイン・コサインは斜辺の長さが1の直角三角形で、タンジェントは水平な辺の長さが1の直角三角形で定義する。これによって、角θと辺の関係を考える必然性が生まれる。

A いきなり辺から座標に移行するのは無理があるので、

辺の長さ ⇒ 有向線分 ⇒ 座標

 とステップを踏んだ方が理解しやすい。

B最終的には図のように、極座標⇔直交座標の変換式として三角比をとらえる。

 

 

    (辺の長さ)⇒(有向線分)        (有向線分)⇒(座標)

 

 

 

 

   (極座標)⇔(直交座標)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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