’05杜陵サークル9月例会の案内

 

 残暑の中にも秋風を感じる今日この頃、杜陵サークルの会員の皆様お元気でしょうか。第2期末考査も終わり年度も後半に突入です。いよいよ学芸の秋の到来、秋の夜長を大いに数学で楽しみましょう。さて、杜陵サークルの9月例会を次の日程でもちます。今回は、岩手大の公開講座「数学の美しさを体験しよう」の後に設定しました。都合のつく方は公開講座にも参加してください。サークルの展示や高校生のミニ発表なども予定されているようです。忙しい中ですが、新しい仲間を誘って参加するようよろしくお願いします。また、サークル終了後いつもの月見亭で“初秋をめでる会”をもつ予定ですので、よろしくお願いします。

 

 

1 日      時 9月23日(金)pm4:30〜8:00

2 場      所 岩手大学教育学部 小宮山研究室407号)

           tel 019-621-6539  fax 019-621-6543

3 内    容  実践レポート発表・検討、

         教具作り& 数学実験

 

インフォメーション

8月27日(土)サンセール盛岡で東数教から石井孝子(成瀬小)、平野(明星学園中)の講師を招き岩教組教研の算数・数学分科会の中間学習会がもたれました。(30人程の小・中の先生達の参加で大成功!)また、同じ場所で学習会終了後、全国大会に向けた実行委員会をもちました。10月の全国・総括会議に向けて、たくさんの準備が必要ですが、今一番必要なのは、たくさんの人に実行委員を引き受けてもらうことでしょう。

来年の全国大会の開会行事の目玉である“講演”は「秋山仁先生と野崎昭弘先生の対談」ということで、両先生の了承が取れました。大会の宣伝に有効に使いましょう。また、アトラクションも花農の“鹿踊り部”にお願いすることに決定しました。

AMI50周年記念出版の“家庭の算数・数学百科”(日本評論社)が4年の月日をかけ、ついに8月6日に発刊しました。AMIの200名を越える執筆者に支えられ480ページの厚さにも関わらず3150円という廉価を実現しました。とてもわかりやすく「寝ころびながらでも読める辞典」です。サークルの6名も著者に入っていますので、たのめば“八掛け”で手に入るはずです。個人でまた学校の図書館に普及したいものですね。

9月8日(木)、9日(金)に高数研の県大会が衣川荘でもたれました。サークルからは、川村先生の“基礎数学”、下河原先生の“中高連携”、高屋敷先生の“2次不等式”、伊藤先生の“教科通信”の4人が発表しました。なんと全レポートの半分がサークル会員でした。また、この研究会の事務局長は、なんと、サークル会員の大内先生という状態でした。

9月末から10月初めは、高教組支部教研が相継いでもたれます。会員の皆さんはできるだけ都合をつけて参加しできればレポートの発表をしましょう。県教研(教科別)は11月18日(金)、19日(土)花巻温泉の予定です。

絶好調の宮本先生と下町先生のホームページ。宮本先生のホームページの中に杜陵サークルのコーナーがあります。皆さんのぞいてみよう。

   下町先生のHP  http://www5b.biglobe.ne.jp/~simomac/

    宮本先生のHP  http://homepage1.nifty.com./toretate/

 

8月例会の様子

 

8月20日(土)杜陵サークル8月例会の様子をお知らせします。

●東京タワーの高さを測る                  宮本次郎(釜石南高校)

 カクシリ器を使って仰角をはかり、高さを測定する実験はよく知られている。しかし、実際に街に出て測定をしようとするとき、巻き尺を伸ばして距離を測定することが難しい状況の方が多い。そこで、距離の測定に「レーザー距離計」を使って見ることにした。

 秋葉原の測定器店で、建設現場用のレーザー測定器(測定精度)を4万円で購入し、さっそく東京タワーの高さを測ることにした。東京プリンスホテルの裏の交差点付近を測定場所に決めた。

 とりあえず、この地点から仰角を測定すると、79.5°

それから、この地点から東京タワーの足の下にある建物までの距離を測ると、42.6m

東京タワーの展望台に上がって降りてくると、この建物の屋上に出る。ここは遊園地のようになっているところ。エレベーターが設置されている部分は屋上の真ん中に出っぱっていて、そこから、建物の壁までの距離は14.7m

エレベータホールの長さは、9m

この測定結果から計算した東京タワーの高さは・・・

ということになる。(素晴らしい近似値!できすぎかも?)

 東京まで出かけて直接測定するというミヤジの行動力に脱帽!のレポートでした。

 

●トーラス上の位相的正多面体                井上具規(花巻北高校) 

 正多面体とは、(@)各頂点に集まる辺の数mが一定であり、(A)一種類の正n角形で作られている凸多面体である。これが5つしかないことは、オイラーの多面体公式

から導くことができる。ただし、点の数、辺の数、面の数とする。

 正多面体の定義をもう少し弱くして、球面上で

 (@)各頂点に集まる辺の数mが一定であり、(B)各面を構成する辺の数nが一定であるという条件で線を引いた一種のグラフを、球面上の位相的正多面体とよぶことにしよう。球面上の位相的正多面体もオイラーの多面体公式から5つしかないことがわかる。

 さて、今度はトーラス上の位相的正多面体を考えよう。トーラスの場合の多面体公式は、オイラー標数が0なので、次のようになる。

・・・@

・・・A

@より

Aより、を消去して

・・・B

*より

これより

明らかに、であるから、

(A)すなわち

(B)すなわち

(C)すなわち

の3種類のパターンしかない。この結果をBに代入しても、辺の数は一意に決定できない。つまり球面上の位相的正多面体の場合とちがって1種類のパターンだけで無数の多面体が存在する。

 次の図は(B)のパターンの2つの例である。

ところで、この図の下に描いてある正方形は、上下と左右の辺を同じ方向で貼り合わせてトーラスを作ったことを示している。また、同心円は、左右の貼る合わせた途中経過である。

 (A)(B)(C)の点・辺・面の最小になるパターンについて考えると、

(A)のときは、すなわち3角形2面で構成

(B)のときは、すなわち4角形1面で構成

(C)のときは、すなわち6角形2面で構成

とまる。これら多面体は次のとおりである。特に(B)はシンプルですばらしい。

●確率問題の研究(エピソード1)他              下町壽男(花巻北高校)

角丸四角形: 問題 A,B,C,Dの4人がいる。今、袋の中に、A,B,C,DおよびRの5種類のカードが何枚かずつ入っているとする。
 この中から1枚を抜き取り、Aを取り出したらAの勝ちで終了。Bを取り出したらBの勝ちで終了。Cを取り出したらCの勝ちで終了。Dを取り出したらDの勝ちで終了。また、Rを取り出したときは、カードを戻してもう一度袋から1枚取り出す。n回カードを取り出したとき、n回以内にAが勝つ確率を求めよ。ただし、A,B,C,D,Rを取り出す確率をそれぞれa,b,c,d,rとする。


 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

(解の1)

 k回目までRを取り出した後、Aを取り出せばよいので、求める確率は

(解の2)

 n回目まで勝負がつかない確率は、

よって、n回目までにいずれかが勝っている(勝負がついている)確率は、

ゆえに、

以上から、等比数列の和の公式を確率の考えから示すことができた。なお、この問題では、A,B,C,Dの4人で考えたが、別に何人でもかまわない。

 この2つの解法を、使いこなすことで入試問題の難問を攻略できることがある。特に、東北大学。

 

微分方程式ではが1の役目を果たす(入魂の課外授業より)

角丸四角形: 問題  が、方程式 を満たすたすことを示せ。 

 

 

T:これは代入してみれば終わりです。

S:のとき、より、

  これでいいですね。

T:ここであげられた式、を微分方程式と呼びます。そしてはこの微分方程 

  式の1つの解ということになります。

S:確かに「代入して成り立つ」ということは、「解である」ということですよね。でも、この方程

  式の解はそれだけなんですか?

T:いや、微分方程式の解は無数にある。例えば、を何倍かした関数だって解だ。確

  かめてごらん。

S:のときより

  なるほどそうですね。そうすると、解はということですか?

T:いや、そうではない。とは別の関数でこの微分方程式満たすものがあるかもしれない。

  考えてごらん。

S:整関数ではどうでしょう。あるかな・・・

T:考えてみると、が混ざった式で0になるというのは、よっぽど特殊な関数でなければな

  らないと気づきませんか。

S:そうか。そこでが登場するのか。つまり、は何回微分してもであることが効いてくるの

  ですね。

T:そうです。

角丸四角形: 1は何乗しても1⇒ は何回微分しても
 

 

 


  という風に見通せます。

S:解き方がわかりました。つまり、

の世界での

の世界での1

  が同じということなんですね。つまり、を解くと

  ということは、を解くと、となるのですね。

T:ただ、気をつけて欲しいのは、これは微分方程式の解を求めているのではありません。満たすも

  ののいくつかを求めたということに過ぎないのです。では、この方程式のすべての解はどのよう

  に表されるのでしょうか?

S:最初に示した通り、が解ということはも解ということです。

  これが解のすべてとはならないのですね。

T:今、の2つの解をとします。つまり、

  がいえます。このとき、

 

 すなわち、も解であるということがわかりました。

S:なあるほど。ということは、今、の2つの解がだったので、

  も解であるということですね。

T:という解もに含まれるので、結局この微分方程式の一般解は、

  となります。

 

●ピタゴラスの定理とその逆                 伊藤潤一(盛岡北高校)                                

 ピタゴラスの定理の逆は中学校でキチンと証明していないが、高校では自明のこととして扱っている。極めて大事な定理にもかかわらず、どこでも証明はなされていないのは問題ではないだろうか?

 ピタゴラスの定理の逆のよく知られた証明に次のようなものがある。

角丸四角形: ピタゴラスの定理の逆
△ABCにおいて が成り立てばこの三角形は∠C=90°である。
 

 

 

 


 △DEFをつくり、EF=BC,FD=CA,∠F=90°とする。 ピタゴラスの定理によって

・・・@

仮定により

・・・A

そしてEF=BC,FD=CAであるからDE=AB、三角形の3辺が等しいので

したがって

すなわち、△ABCは直角三角形である。

 これで一応立派な証明になっているが、なんか“口車に乗せられた”ようで、今一すっきりしない。

多分、生徒も同じだと推測する。あまりすっきりしない証明に甘んじているうちに中学を卒業して、高校にやってくる。実は、すっきりしないという生徒の感覚を大事にしたいのだが…。

 どうせ定理の逆をやろうとするならば、次のようにやった方がよい。まず、ピタゴラスの定理を使って、パップスの定理(中線定理)を示す。

角丸四角形: パップスの定理(中線定理)
三角形ABCの辺BCの中点をMとするとき、次の関係が成り立つ。
 

 

 

 

 


頂点Aから対辺BCに垂線AHをおろす。

ピタゴラスの定理より

・・・@

・・・A

@+Aより

 つづいて、タレスの登場である。タレスの名を冠したこの定理は、何でも幾何における“証明”のスタートになった記念碑的存在である。ちなみに、以前私は“ターレス”と書いていたが(そう書いてある本もある)、正確には“タレス”あるいは“タレース”と書くべきだと、野崎先生に教わった。野崎先生は、数学史の上垣先生から聞いたらしい。

角丸四角形: タレスの定理
円の直径の円周角は直角である。
 


 

 

証明は、二等辺三角形の性質と三角形の内角の和から実に簡単に導かれる。

 パップス定理とタレスの定理を組み合わせると、ピタゴラスの定理の逆の証明ができる。

角丸四角形: ピタゴラスの定理の逆
△ABCにおいて が成り立てば、この三角形は∠A=90°である。
 

 

 


辺BCの中点をMとする。仮定より

・・・@

また、パップスの定理より

・・・A

@、Aより 

これより、

となり、△ABCは、辺BCの中点Mを中心とした円に内接している。タレスの定理により、

∠A=90°

 この証明の方が、前の“口車に乗せられたような”証明より、納得してくれると思う。

 

●準正多面体の体積と表面積そのU2nd             下河原 英(軽米高校)

 今回は、“切頭四面体”と“切頭六面体”についてのレポート。まずは、切頭4面体について。

切り取る前の正4面体の1辺の長さを1とすると、この多面体から得られる切頭4面体の1辺は。また、切り取られる正三角錐は正四面体なので、この体積は1辺が1の正四面体のである。その体積は、

 もとの正四面体から、頂点の数だけ1辺の長さがである正四面体を切り取ればよいので体積は、

また、この準正多面体の面は1辺がの正三角形が4面、正六角形が4面。しかも都合のよいことにこの正六角形の面積は正三角形の6つ分であるので、表面積は、

 この準正多面体は1辺がであったが、1辺が1の場合の体積と表面積を考えると、相似比が1:3であることから体積は、

表面積は、

となる。次に、切頭六面体について考えよう。

 切り取る前の正六面体の1辺の長さを1とし、切り取った後の切頭六面体の1辺の長さをxとすると、図から

 すなわち 

切り取る三角錐の1つの体積は

よって、この切頭六面体の体積

また、この切頭六面体の面は1辺がxの正八角形が6個、正三角形が8個ある。この正八角形の面積は切り取る前の面、すなわち1辺が1の正方形の面積から4つの直角2等辺三角形の面積を減じて

正三角形の面積は

よって、表面積

この結果を利用して1辺が1の切頭六面体の体積と表面積を求めると、

となる。

 

 

積分であらわされる関数の逆関数              宮本次郎(釜石南高校)

 今年は3年生の担当である。数学Vの積分をやりながら考えたことを紹介する。定積分を勉強していると、

という有名な置換積分の計算が登場する。そこで、この計算から、次のような関数を考える。

角丸四角形:
 

 

 


とおくとき、をみたすθをとると

となるから、この関数は、関数の逆関数となっている。

 同じように有名な定積分の計算

もある。そこで、で定義される次のような関数を考える。

角丸四角形:   

 

 


となるようにθをとると

となる。これは、関数の逆関数となっていて、に自然に延長される。さて、

角丸四角形:   


 

 

を考える。この積分では、とおき、となるθをとると

となる。よって、この関数は、の逆関数になっている。また、同じように

角丸四角形:   

 

 


を考える。この積分では、とおき、となるθをとると

となる。よって、この関数は、の逆関数になっている。さらに、

角丸四角形:
 

 

 


を考える。この積分では、とおき、となるyをとると

となる。よって、この関数は、の逆関数になっている。

 ところで、この積分表示を使うと、積分の計算だけで指数法則を証明できる。すなわち、

を示すのである。これは、逆関数に関する加法定理

を意味する。

 さて、関数は有限区間でしか定義されていない。そこで、関数において加法定理が証明されたように、関数についても、その積分表示から加法定理

が証明できれば、この加法定理を保存するようにを定義することによって、全実数で定義された周期関数が定義することができるはずである。

 

 

 

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