取れたての定理集

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オイラーの多面体定理とちなつの定理

はじめに

 多面体について共通な性質というと「オイラーの多面体定理」が有名です。オイラーの多面体定理の証明を参考にしながらちなつの定理の証明を試みながら、ちなつ定理とオイラーの多面体定理にある関係を明らかにします。

オイラーの多面体定理

 凸多面体において、多面体の頂点の個数(V)と辺の個数(E)と面の個数(F)の間には
   V―E+F=2
という関係が成り立ちます。

 例えば5つの正多面体について、頂点の数・辺の数・面の数を数えてまとめてみました。

立体頂点の数辺の数面の数V−E+F
正四面体
立方体12
正八面体12
正十二面体203012
正二十面体123020

 一定になるという「V―E+F」の値には、「オイラー数」という名前がついていて、オイラーの多面体定理とは「凸な多面体」については、そのオイラー数が2となるというものです。


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凸でない多面体のオイラー数

 凸でない多面体のオイラー数を調べてみよう。「ちなつの定理」の最後の方で見た階段型の多面体についてみてみましょう。頂点の数Vは14、辺の数Eは21、面の数Fは9となり、オイラー数V―E+Fは2となりなます。「凸」という条件をみたしていないけれどもオイラー数は2になっています。

 他の多面体についても調べたものを表にまとめてみました。

立体オイラー数不足角の合計
立方体720°
階段型720°
1穴ドーナッツ0°
2穴ドーナッツ−2−720°
3穴ドーナッツ−4−1440°
4穴ドーナッツ−6−2160°

 この表を見ると、私が考えた頂点の周りをまわるときの不足角を合計したものと、オイラー数との間には関係があるように見えます。  V−E+Fの値をオイラー数というのにちなんで、頂点のまわりを回転するときの不足角の合計を「おいらの数」と呼ぶことにしましょう。次のような関係がありそうです。

ちなつの定理

  「おいらの数」=360°×「オイラー数」


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オイラーの定理の証明

 

 オイラーの定理はいろいろな方法で証明されていて、例えばhttp://www.ics.uci.edu/~eppstein/junkyard/euler/にたくさん紹介されています。その中で、次のような証明を参考にして考えていきましょう。

 考えている多面体から、ひとつの面を切り取りましょう。

 切り取ったあとの立体を、辺のところにはさみを入れて切って展開していくことを考えましょう。

 一つの辺にはさみを入れたとき、立体の一つの辺は、はさみできられることによって、2つの辺になります。したがってEは1だけ増加します。また切れ目を入れて離れた頂点については、もともとひとつの頂点が二つになるのですから、Vは1増加します。面の数には変化がありません。これらのことから、V−E+Fの値は切れ目を入れるという操作によって変化しないことになります。

 一つの面を取り去った立体の辺にはさみをいれていって展開図のように平面に平らにおくことができます。ここまでは、上で述べたように、どのように切ってもV−E+Fの値は変化しません。

 次に、できた「展開図」を見てみましょう。いくつかの多角形が辺を共有してつながっています。この展開図から一つの多角形を切り取ることを考えましょう。

 辺にはさみを入れて「展開図」から一つの多角形を切り取ったとき、はさみをいれた辺が、切断によって一つの多角形の一辺と切り取られて小さくなった「展開図」の一辺になりますから、全体のEは1増加します。また、その辺の両端の点についても、それぞれ1ずつ増加していますので、Vは2増加します。ここで、切り取られた一つの多角形については、V=EでF=1ですからV−E+F=2が成り立っています。

 切り取られた多角形と小さくなった「展開図」の合計のV−E+Fについては、Eが1増加しVが2増加しているのでV−E+Fはトータル1増加します。これから、切り取られた多面体についてのV−E+F=1を取り去りますと、残された「展開図」についてのV−E+Fは、最初の「展開図」のものと等しいことになります。

 このようにして、「展開図」から、面をつくっている多面体を切り取る作業を続けてもV−E+Fの値は変化しないことがわかります。

 このようにして、最後にはとうとうひとつの多角形が残されることになります。多角形については、V−E+F=1が成り立ちますから、最初に一つの面を取り去った立体のV−E+Fの値も1であったことになります。

 最初に取り去った面を付け加えるとき、頂点、辺の数は変化しませんが、面の数が1増加しますから、最初の多面体については、V−E+F=2であることが証明できました。


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立体の結合によるオイラー数と「おいらの数」の変化

 

 オイラーの多面体定理の証明では、立体にはさみを入れて展開図を書き、さらにそれからの面を切り取っていった時のオイラー数の変化の仕方を調べました。これを真似して、立方体を結合していくとき、オイラー数と「おいらの数」がどのように変化するのか調べてみましょう。

 立体に立方体を結合するとき、その結合の仕方は、面と面がくっつくとき、辺と辺がくっつくとき、頂点と頂点がくっつくときが考えられます。考えられる結合の仕方についてひとつひとつ調べてみましょう。

頂点と頂点の結合

 写真のように2つの立方体が一つの頂点で結合する場合、頂点を回るときにはどちらかの立方体の表面だけを通ることになり、立方体が2つある状態と本質的に変わりません。「おいらの数」は一つの立方体の二つ分の1440°になります。

 ひとつの立方体の頂点の数をV、辺の数をE、面の数をFとし、他方の立方体の頂点の数をV’、辺の数をE’、面の数をF’とすると、
   V−E+F=2 , V’−E’+F’=2
となっていて、結合した立体の頂点、辺、面の数は、それぞれ、
   V+V’−1 , E+E’ , F+F’
ですから、結合した立体のオイラー数は3となります。

 このようにしてできた立体に対して、また別の立方体を頂点同士で結合させると、同じように変化します。「おいらの数」は、結合してある立方体の数だけ720°増加します。


 オイラー数については、
   2×(結合した立方体の数)−(結合によって重複した頂点の数)
となります。

 このような結合によって、
   「新しい立体のオイラー数」=「二つの立体のオイラー数の和」 − 1 
   「おいらの数」= 「ふたつの立体のおいらの数」
となっています。

 ある立体に直方体を1つの頂点だけを共有して結合する場合、
オイラー数は、1だけ増加するし
   おいらの数は、720°増加する
という変化をすることになる


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辺と辺の結合

二つの立方体が1辺を共有して結合するとき

 ひとつの立方体の頂点の数をV・辺の数をE・面の数をFとし、他方の立方体の頂点の数をV’、辺の数をE’、面の数をF’とすると、
   V−E+F=2 , V’−E’+F’=2
であって、結合した立体の頂点、辺、面の数は、それぞれ、
   V+V’−2 ,  E+E’−1 , F+F’ であるから、結合した立体のオイラー数は3となります。

 一方、各頂点のまわりの回転不足角について考えると、結合に関わらない合わせて十二個の頂点については、それぞれ90°の不足になるが、結合部分の2つの頂点については、ひとつの頂点の周りに集まっている正方形の数が6個になって、180°余ることになります。

したがって、不足角の合計である「おいらの数」は、
   90°×12+(−180°)×2=720°
となります。二つの「おいらの数」の和から720°減少しています。


 このような結合によって、
   「新しい立体のオイラー数」 = 「二つの立体のオイラー数の和」− 1
   「おいらの数」 = 「ふたつの立体のおいらの数の和」 − 720°
となります。

 ある立体に直方体を、1辺を共有するように結合させると、
   オイラー数は、1増加するし
   おいらの数は、変化しない
という変化をすることになります。



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2辺を共有して結合するとき

 一つの辺を共有する写真31のような立体を考えてみましょう。この立体のオイラー数は3、「おいらの数」は720°です。この立体に立方体が二辺を共有して結合することを考えましょう。

 写真の立体の頂点の数をV、辺の数をE、面の数をFとし、結合する立方体の頂点の数をV’辺の数をE’面の数をF’とすると、
   V−E+F=3 , V’−E’+F’=2
となり、結合した立体の頂点、辺、面の数は、それぞれ、
   V+V’−3 , E+E’−2 , F+F’
であるから、結合した立体のオイラー数は4となります。

 こうしてできた立体について、結合に関係しない頂点は全部で15個あります。それらについての不足角は90°です。また、二つの立方体が辺を共有して結合してできる頂点が3つあって、そこには正方形が6つ集まっています。そして、3つの立方体の頂点が集まってできる頂点が一つあります。この頂点の一方の面では、正方形が6つ集まっているのですが、裏の面では、3つしか集まっていません。
 このことから、新しい立体についての「おいらの数」は
   90°×15+(−180°)×3+(−180°)+90°
   =720°
となっています。

 このような結合によって、
   「新しい立体のオイラー数」=「二つの立体のオイラー数の和」 − 1 
   「おいらの数」= 「ふたつの立体のおいらの数」 − 720°
となっています。

 ある立体に直方体を、2辺を共有するように結合させると、
   オイラー数は、1増加するし
   おいらの数は、変化しない
という変化をすることになります。



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3辺を共有して結合するとき

 写真の階段状の立体はオイラー数2、「おいらの数」は720°の立体です。これに立方体を三辺を共有するように結合する場合を考えましょう。

 ふたつの立体について
   V−E+F=2 , V’−E’+F’=2
が成り立っていて、結合した結果の立体の頂点、辺、面の数は、それぞれ、
   V+V’−4 , E+E’−3 , F+F’
ですから、結合した立体のオイラー数は3となります。

 20個ある頂点のなかで、14個は3個の正方形が集まっているもので、5個の正方形が集まっている頂点が3個、6個の頂点が集まっている頂点が3個あります。そして1個の頂点は結合に関係する3辺の共通の頂点が結合する点であり、その頂点のまわりは3個の正方形が集まっている面が3つ集まっています。これらを全部集めると、
   90°×14+(−90°)×3+(−180°)×3+90°×3
  =720°
となっています。


 このような結合によって、
   「新しい立体のオイラー数」=「二つの立体のオイラー数の和」 − 1 
   「おいらの数」= 「ふたつの立体のおいらの数」 − 720°
となっています。

 ある立体に直方体を、3辺を共有するように結合させると、
   オイラー数は、1増加するし
   おいらの数は、変化しない
という変化をすることになります。


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4辺を共有して結合するとき

 上の写真のような二つの立体を結合する場合には、頂点が5つ減少して辺が4つ減少するから、同じように考えて結合の結果できる立体のオイラー数は、結合する二つの立体のオイラー数の和から1減少します。また「おいらの数」についてもこれまでと同様に計算します。2つの数についてまとめると
   「新しい立体のオイラー数」=「二つの立体のオイラー数の和」 − 1 
   「おいらの数」= 「ふたつの立体のおいらの数」 − 720°
となっています。

 ある立体に直方体を、4辺を共有するように、しかもその4辺が新しい面を作らないように結合させると、
   オイラー数は、1増加するし
   おいらの数は、変化しない
という変化をすることになります。

 ところが、下の写真のように、同じ四辺を共有して結合しながら、貫通した穴をふさぐ面が生じる場合には、オイラー数は、二つの立体のオイラー数の和になっている。また、この場合には「おいらの数」は、0°だったものが、720°に変化します。二つの立体の「おいらの数」の和になったと考えられます。


すなわち、
   「新しい立体のオイラー数」=「二つの立体のオイラー数の和」
   「おいらの数」= 「ふたつの立体のおいらの数」
となります。

 ある立体に直方体を、4辺を共有するように、しかもその4辺で囲まれた面があるように結合させると、
   オイラー数は、2増加するし
   おいらの数は、720°増加する
という変化をすることになります。




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5辺を共有して結合するとき

  この場合にも、オイラー数は、二つの立体のオイラー数の和から、1減少します。「おいらの数」は、どちらも720°であったものが、結合によって、やはり720°となって変化しません。

 ただし、この場合にも、次の写真のように、貫通した穴が減少するような結合の時には、オイラー数・「おいらの数」ともに変化します。


 結合に使われる辺がひとつの面を作らないときには、
   「新しい立体のオイラー数」=「二つの立体のオイラー数の和」 − 1 
   「おいらの数」= 「ふたつの立体のおいらの数」 − 720°
となっります。
 立体に直方体を結合させたときの変化としては、
   オイラー数は、1増加するし
   おいらの数は、変化しない
という変化をすることになります。

 結合に使われる辺が面を作るときには、
   「新しい立体のオイラー数」=「二つの立体のオイラー数の和」
   「おいらの数」= 「ふたつの立体のおいらの数」
となります。

 直方体を結合させた結果、
   オイラー数は、2増加するし
   おいらの数は、720°増加する
という変化をすることになります。


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辺を共有して結合するときのまとめ

 辺を共有して結合するときのオイラー数と「おいらの数」の変化については共有する辺のつながり具合によって変化の仕方が異なるようである。

 これまで見てきた結合では、結合にかかわる辺の数と頂点の数の差が1のときには、1だけ変化し、差が0のときには、変化がなかった。二つの辺を共有する結合で、辺の数と頂点の数の差が2となる場合には、オイラー数もその分変化するし、「おいらの数」も720°のオイラー数の変化倍だけ変化していることがわかる。 



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