この話は、多面体の表面で多角形を描いたときに成り立つ不思議な法則を発見するものです。
平面上で三角形の内角の和をとると180度になります。n角形の内角の和はnによって異なる値になりますが、外角の和をとると、どんなn角形でもいつでも360度になります。
ところが球面上で三角形の内角の和は180度よりも多くなりますし、別の曲面上では180度よりも小さくなることもあります。
そこで、多面体の表面上でn角形の外角の和を調べて、そこにある関係を調べていきます。
まず手始めに、平面上のn角形の内角の和を求めてみましょう。
n角形は、(n−2)の三角形に分解して考えることができます。一つの三角形の内角の和は180°ですから、n角形の内角の和は180°×(n−2)となります。
n角形のn個の内角をA1,A2,・・・Anとするとき、外角の和は、
(180°−A1)+(180°−A2)+・・・+(180°−An)
=180°×n−(A1+A2+・・・+An)
=180°×n−(180°×(n−2))
=360°
となっています。
外角の和は常に360°となることが分かりました。
このことは、また、次のように理解することができます。つまり、このn角形の辺の上を歩いていくことを考えましょう。頂点のところで、方向を回転します。回転量はその角の外角です。このようにして1周して戻ってきたときには、またもとの位置、もとの方向を向いていますが、その間に、各頂点で少しずつ向きを回転して、1周する間に1回転してしまいます。このように考えると、外角の和が360°になるのは、当たり前のことと思えますね。
球面上の三角形の内角の和が、球面全体の面積をSとすると、
180°+720°×三角形の面積/S
であることを、昨年の文化祭で調べました。
この結果を使えば、球面上で描いた三角形の外角の和は、
(180°−A1)+(180°−A2)+(180°−A3)
=180°×3−(A1+A2+A3)
=180°×3−180°−720°×三角形の面積/S
=360°−720°×三角形の面積/S
となります。
内角 33° 17° 68° 内角の和 118° 62°不足 外角 147° 163° 112° 外角の和 422° 62 °過剰 |
内角 33° 25° 62° 内角の和 120° 60°不足 外角 147° 155° 118° 外角の和 420° 60°過剰 |
内角 33° 50° 50° 内角の和 133° 47° 不足 外角 147° 130° 130° 外角の和 407° 47° 過剰 |
内角 33° 75° 44° 内角の和 152° 28°不足 外角 147° 105° 136° 外角の和 388° 28 °過剰 |
内角 33° 110° 20° 内角の和 163° 17° 不足 外角 147° 70° 160° 外角の和 377° 17° 過剰 |
内角 33° 136° 12° 内角の和 181° 1° 過剰 外角 147° 44° 168° 外角の和 359° 1° 不足 |
内角 76° 23° 65° 内角の和 164° 16° 不足 外角 104° 157° 115° 外角の和 376° 16° 過剰 |
平面上でn角形を描いて、その外角を加えていくと、そのn角形を沿って動いたひとの、進行方向を変える角度の総和になります。したがって、n角形でなくても、円を描いてもその進行方向の変化の総和が360°になることなります。
そこで、これから多面体の表面上に描かれたn角形の外角の和を調べていきますが、そのためには、多面体上に描かれた円を描くのに何度回転すればいいかを考えていけばよいのです。
まず手始めに正四面体について考えて見ましょう。
正四面体の惑星が存在するとして、この惑星の上で三角形を描いたとき、どのようなことになるか考えてみましょう。
そのために、最初に注意したように正四面体の表面上で円を描いてみましょう。
正四面体の星の上に住む人が、その表面上をぐるっと円を描いて回るとき、左のように、一つの側面の上だけで回る場合には、平面と同じことになります。 この場合の回転角は360°になります。 したがって、一つの側面の中だけでn角形を描いたとき、その外角の和も360°になります。
次に、一つの側面から出発して、隣の側面に移ってぐるっと回って元に戻る場合を考えましょう。 側面を展開すると、下の図のようになる。 この場合も平面と同じになります。
次に、描いた円の内部に、四面体の頂点が含まれる場合を考えてみましょう。 頂点を円の内部にぐるりと1周すると、その展開図は次のようになります。
この最後の場合だけは、ぐるりと回るまでに方向の変化を加えていっても180°にしかならないことがわかります。
このことから、この正四面体の表面にn角形を書くとき、そのn角形の内部に頂点があるようなときには、その外角の和は、180°であり、平面のときの360°に180°足りないことがわかります。
正六面体(立方体)の場合はどうなるでしょう。
この場合も、一つの側面の中だけでぐるりと回るときには、平面の場合と同じです。また、内部に頂点を含まないようにぐるりと回るときも、展開図を考えるて平面と同じであることがわかります。そして、この場合も内部に頂点がある場合に平面と異なることが起こります。
一つの頂点を中心にぐるりと回るとき、その展開図は次の図のようになります。
この場合には、方向の変化の総和は270°で一回転してしまうことがわかります。
したがって、立方体の表面上で、一つの頂点を内側に含むようなn角形の外角の和は270°になり、平面のときよりも90°少なくてもすむことがわかります。
正八面体の場合も、内部に頂点を含まないときは平面とおなじです。
内部に一つの頂点を含むときには、ぐるりと回る様子を展開図で見ると、次のようになります。
したがって、240°で一回転してしまいます。
n角形の外角の和は240°となり、平面の場合よりも120°不足することがわかります。
正十二面体の場合です。 内部に一つの頂点を含むときには、ぐるりと回る様子を展開図で見ると、次のようになります。
したがって、108°×3=324°で一回転してしまいます。
よって、n角形の外角の和は324°となり、平面の場合よりも36°不足することがわかります。
正二十面体の場合です。
内部に一つの頂点を含むときには、ぐるりと回る様子を展開図で見ると、次のようになります。
したがって、60°×5=300°で一回転してしまいます。
したがって、n角形の外角の和は300°となり、平面の場合よりも60°不足することがわかります。
5つの正多面体について共通しているのは、頂点を内側に含まないでぐるりと円を描くときには、一回転するのに進行方向を変化させる角度の総和が360°になっているが、頂点を内側に含むときには、360°よりも小さい角度で一回りすることができます。その不足分については、多面体ごとにいろいろで、5つの多面体について不足角をまとめると、次の表のようになります。
正多面体 | 面の形 | 頂点の個数 | 不足角 | 頂点の個数×不足角 |
正四面体 | 正三角形 | 4 | 180° | 720° |
正6面体 | 正方形 | 8 | 90° | 720° |
正8面体 | 正三角形 | 6 | 120° | 720° |
正12面体 | 正五角形 | 20 | 36° | 720° |
正20面体 | 正三角形 | 12 | 60° | 720° |
ここで、ひとつの頂点の周りの一回転の角度はいろいろですが、各頂点における不足分を全部加えると、多面体の種類にかかわらず、常に一定の720°になっていることが分かりました。
前節で、正多面体おまわりの回転角をθとし、頂点の数をnとすれば、
( 360°―θ )×n=720°
となることが分かりましたが、例えばサッカーボールのような正五角形と正六角形が組み合わさってできている多面体についても調べて見ましょう。
私の予想としては、同じことが成り立っていると思います。
この多面体のどの頂点も、2つの正六角形と1つの正五角形が集まっています。展開すると、上の図のようになります。
頂点の周りに回転角は一回転が
120°+120°+102° = 18°
となっています。
この多面体の頂点の数は全部で60個ですから、
18°×60=720°
となっています。
この多面体の各頂点は、二つの正六角形と、一つの正方形が集まっています。頂点の数は24個です。 展開図は上の図のようになります。
120° +120°+90°=330°
となるので、
30°×24=720°
となっています。
これは、すべての面が合同な12のひし形でできています。一つのひし形は、70°、110°のひし形になっています。
この多面体の頂点は2種類あって、ひし形が3つ集まる頂点と、4つ集まる頂点があります。ひし形が3つ集まる頂点は8個、ひし形が4つ集まる頂点は6個あります。
ひし形が3つ集まる頂点の周りを一周すると、上の展開図より
110°×3=330°
となります。したがって、不足分は30°です。
このような頂点が8個あるので、
30°×8=240°
となります。
また、ひし形が4つ集まる頂点の周りを一周すると、上の展開図より
70°×4=280°
となります。したがって、不足分は80°です。
このような頂点が6個あるので、全部で
80°×6=480°
となります。
以上から、この多面体の各頂点の一周に不足する角度を加え合わせると
70°×4+80°×6=720°
となります。
これも、すべての面が合同なひし形でできています。一つのひし形は内角が65°と115°とから成っていて、このようなひし形が5個集まる頂点と3個集まる頂点があります。
ひし形が5個集まる頂点は12個、3個集まる頂点は20個あります。
ひし形が5個集まる頂点の周りをぐるりと一回りすると、
65°× 5 = 325°
回転します。したがって、不足分は35°で、これが12個あるので、
35°× 12 = 420°
ひし形が3個集まる頂点の周りをぐるりと一回りすると、
115°× 3 = 345°
回転します。したがって、不足分は15度で、これが20個あるので、
15°× 20 = 300°
以上から、各頂点の不足分を合計すると
35°× 12 + 15°× 20 = 720°
となっています。
このような立体の表面ではどうなっているのか調べてみましょう。
この立体は、全部で14個の頂点があります。その14個の中には2種類の頂点があります。一つの頂点は、立方体の頂点と同じで、正方形が3つ集まっている頂点です。これは11個あります。もう一つの頂点は、一つの頂点に正方形が5つ集まっています。これは3個あります。
正方形が3つ集まる頂点では、その頂点の周りを一回りするのに、90°× 3 = 270°回転します。360°に90°不足しています。
正方形が5つ集まる頂点では、その頂点の周りを一回りするのに、90°× 5 = 450°回転します。360°よりも90°過剰になっています。
すべての頂点について、不足分と過剰分を足し合わせます。これまでどおり、不足分を+で表すと、90°×11+(−90°)×3=720°となります。
この立体には、全部で16個の頂点があります。これらも2種類に分けられます。
ひとつは、3つの正方形が集まっている頂点であり、全部で8個あります。
もうひとつは5つの正方形が集まっている頂点であり、これも全部で8個あります。
正方形が3枚集まる頂点では、90°不足ですし、正方形が5枚集まる頂点では90°過剰になります。
したがって、これらを全頂点について足し合わせると、
90°×8+(−90°)×8 = 0°
となります。
普通の多面体の場合には、どの頂点の周りでも360°よりも少ない角度で一回りできます。このような場合には、各頂点における不足分を足し合わせると720°になりました。頂点によって不足分が異なる場合もありましたが(ひし形十二面体や、ひし形二十面体)、この場合にも全部加えると720°となります。
次に、階段型のように、頂点によっては、頂点の周りを一回りするのに360°以上かかるところが出てくる場合もあります。このような場合には、そのような分だけ、不足する頂点が増えてきて、トータルでは720°になってしまうような気がします。
この形は、立方体お4つ正方形型に並べてできる直方体の1箇所からポコンとコブが出たような形ですが、このようにコブが出ても、トータルで720°は変化しないということが分かりました。ということは、このようなコブは何個でてもやっぱり720°は変わらないということになります。
ある頂点でへこんでもその分でっぱる頂点が増えるようなときには大丈夫ですが、すっかり穴が開いてしまうと、過剰な部分が増えてしまい、最後のドーナッツ型立体では720°になりませんでした。
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